2008年10月26日

紅茶専門店Anna Maria店主のお茶の履歴書 ―― 日々、お茶と共に ――    第5回 園芸と農業(1) 一人だけのティータイム

目 次

 

   第1回    中国料理を通して ―中国茶との出会い―

第2回 主婦の憩いの時間に ―お茶はいつも正しく淹れて―

第3回    UVA そして DIMBULA

第4回    インド料理を通して ―スパイス入門―

→ 第5回    園芸と農業(1) ―一人だけのティータイム―

第6回     園芸と農業(2) ―岐路 もしかしたらガーディナー

第7回 シンガポール時代(1)  ―料理のこと―

第8回    シンガポール時代(2) ―紅茶のこと―

第9回    シンガポール時代(3) ―中国茶のこと―

第10回    ウバの正体を知る

第11回    静岡の緑茶と静岡の紅茶について

第12回 米国フィラデルフィア美術館 ―茶室「寸暇楽庵」見学― 

第13回 本物のインド紅茶との出会い ―ダージリンの奥深さを知る―

第14回 本物のスリランカ紅茶との出会い ― とうとうゲット 最高のウバ

第15回 ロンドン研修 The Lanesboroughでの7日間

第16回 登録商標「紅茶専門店Anna Maria ―名前の由来―

第17回    終わりに 垣間見た歴史 ―紅茶を通して―

 

 

私たち家族はその後、東京のベッドタウンである千葉県のある町に150坪の土地を購入し、家を建てて都内のマンションから引越ししました。 JRの駅までの昼間のバスが不便で、東京都心までともすれば1時間半以上もかかりましたが、広い庭で私は生まれて初めての農業に挑戦しました。種からトマトを栽培し、ジャガイモ、オクラ、ピーマン、なす、小松菜、グリンピース、ソラマメ、サツマイモなど、次から次へと作ってみました。

 

四季折々の花々も育て、秋には春に咲く花の球根を植え、春は秋のものを。

門の脇とテラスの前の花壇は冬を除き、いつも花が咲き乱れ.イチジクは大きな甘い実をつけ、枇杷はたわわに実り、晩秋には真っ赤な石榴が関東の乾いた青空に彩を添え、キーウイーは旺盛に蔓を伸ばして沢山の実をつけました。 庭の隅には料理のために柚子も植えました。

 

桜はどんどん成長し、秋は落ち葉の始末が大変でした。 当時は庭で物を燃やしても構わなかったので晩秋には落ち葉をかき集め、落ち葉焚きをして焼き芋をするのが楽しみでした。 ですから私はいつも泥だらけで、朝からただ黙々と働いていると気がつけばもう夕方になっていました。

 

茜色に輝いていた庭が次第に暗くなり、その南西の隅だけ微かに茜色を残し、まさに日の落ちなむとする晩秋の夕、泥だらけの私は出窓に腰掛け休息をとりました。  お茶を飲みながら庭の向こうを見やると、まだくすぶっている焚き火が思い出したかのように勢いよく爆ぜ、暗闇に燃え上がる焔と舞い上がる火の粉はとても幻想的で、私は飽きることなく眺めていました。  それが私のティータイムでした。 それは、イギリス産業革命の当時、労働者階級の人々がエネルギーと暖を取るために紅茶とスコーンなどで腹を満たしたのと状況は全く同じでした。 私の場合は、芋と渋い日本茶であったり、自家製アップルパイとコーヒーだったり、スポンジケーキと紅茶など様々でしたが。

 

コーヒーはハワイコナが好みでしたが、究極の無農薬コーヒーが手に入るとそれを飲んでいました。 究極の無農薬コーヒーとはジャングルで自然に育ったコーヒーを近辺の住民がジャングルに分け入って収穫してきた全く自然のコーヒーのことを私がそのように言っているのですが、粒はそろっていないものの、あっさりとした風味でおいしいものでした。

 

お菓子は、和菓子も含めて殆ど自分で作りました。 たまにデパートまで出向き、鶴屋八幡のお菓子を買ってきて、お抹茶にすることもありました。 窓辺での一人ぼっちのティータイムで私は孤独と向き合い、自身の存在を確認するのでした。 そうしているうちに、無意識の中に押し込めていた悩みは発散し、心身共にエネルギーガが蘇ってきました。 それから夕餉のしたくに取り掛かるのですが、基本的にこのような生活は20年以上に及びました。 

 

日常をこのように過ごしてきたことは、お店で一日過ごす時の過ごし方のヒントになっています。 又、収穫したばかりの野菜は、調味料など必要としないほどおいしく、肉などもスパイスなどは使用しても、なるべく調味料を使わず、素材のうまみだけで食べられるような料理を心がけました。 パンやケーキはもちろんのこと、味噌、らっきょう漬け、豆腐なども作ってみました。 こうした食生活はお店のメニューにも反映していまして、なるべく自然のままで、素材のおいしさや滋養を感じられるような物をお出ししたいと思っています。 

 

余談になりますが、イングランド国王チャールス2世のポルトガル人の王妃キャサリンが1662年に膨大な量の紅茶を結納品として持参したことは紅茶通のよく知るところですが、このことについて、英国歴史学者のSusan Cohen 女史は、その著書「Where to Take Tea」の中で、「王妃キャサリンがどれだけその孤独を紅茶によって慰められたか、本人も知り得ないほどであろう」と記しています。 紅茶はサロンの主役としてのみならず、労働者にエネルギーと暖を与え、さらに、人々の孤独にそっと寄り添う友としての役割も果たしてきたのでした。

2008年10月19日

紅茶専門店Anna Maria 店主のお茶の履歴書 -日々、お茶と共に-                     第4回 インド料理を通して -スパイス入門-

                          目 次

 

   第1回    中国料理を通して ―中国茶との出会い―

第2回 主婦の憩いの時間に ―お茶はいつも正しく淹れて―

第3回    UVA そして DIMBULA

→ 第4回   インド料理を通して ―スパイス入門―

第5回    園芸と農業(1) ―一人だけのティータイム―

第6回    園芸と農業(2) ―岐路 もしかしたらガーディナー

第7回 シンガポール時代(1)  ―料理のこと―

第8回    シンガポール時代(2) ―紅茶のこと―

第9回    シンガポール時代(3) ―中国茶のこと―

第10回    ウバの正体を知る

第11回    静岡の緑茶と静岡の紅茶について

第12回 米国フィラデルフィア美術館 ―茶室「寸暇楽庵」見学― 

第13回 本物のインド紅茶との出会い ―ダージリンの奥深さを知る―

第14回 本物のスリランカ紅茶との出会い ― とうとうゲット 最高のウバ

第15回 ロンドン研修 The Lanesboroughでの7日間

第16回 登録商標「紅茶専門店Anna Maria ―名前の由来―

第17回    終わりに 垣間見た歴史 ―紅茶を通して―

 

第4回   インド料理を通して ―スパイス入門―

 

小さい子供のいる主婦の務めのひとつに子供たちを公園に連れて行くことが挙げられますが、その公園でインド大使館のミセスMとお友達になりました。 私たちはお互いの家庭に招待したりされたりしながら家族ぐるみのお付き合いをしました。 ミセスMからはインドの家庭料理をご馳走になりその作り方を教えてもらいました。私は前述したように中国料理が得意だったので、酢豚をはじめ当時はまだ日本ではなじみの無い料理など色々とご馳走しました。 ミセスMご夫妻は私を通して中国料理を初めて召し上がったのでしたが、中国料理はとても軽いと感想を述べられたのにはこちらが驚きました。 ミセスMの食卓ではナンではなく、大判餃子の皮を揚げたようなプーリーという薄い揚げものが出されました。

 

ところが、お宅に遊びに行っても紅茶がでたことは一度もありませんでした。 私も紅茶を研究していたわけではなく、いつも紅茶に関心があったわけでもなく、私たちの話題は子供のこととか、嫁と姑などに関する事でした。 

 

ミセスMと東京九段下のインド雑貨店に、前述したプーリーを作る小麦粉やサリーの布地などを買いに行ったことがあります。 そして作り方を教えてもらってサリーも作ってみました。 几帳面な方で、私のミシンがほこりだらけなのを見て、ミシンはいつも綺麗にしていないと故障の原因になると注意されました。

 

若くて、人に何かをしてもらって当たり前だった私に、人に招かれたら必ず次は自分がその人を招かなければならないという大使館の奥様らしいアドバイスをして下さいました。 二人の幼児の育児と家事に悪戦苦闘していた頼りなげな日本人の若い母親にミセスMはもっと言いたいことがあったかもしれません。 

 

その30年後に私は紅茶専門店Anna Mariaを開いたのですが、ミセスMのおかげでスパイスに慣れ親しんでいましたので、店でチャイを作る時は大変助かっています。チャイにカルダモンを使う時、rの音を巻き舌で強く発音していたミセスMを時々思い浮かべます。 又、ミスターMからMという名前はマハラジャに由来すると教えてもらいました。

 

"honestly"と言うのが口癖だった誠実なミスターMと几帳面なミセスMのご夫妻は3年の日本勤務を終えられ、インドに戻られました。

 

次回は10月26日()東京育ちの専業主婦が志だけは自給自足を目指して始めた家庭菜園奮闘記と、唯一の余暇であった、窓辺でのティータイムのお話です。

2008年10月12日

大好評の「生りんごを使ったアップルティー 」今年も始めました

毎年この季節に大好評を頂いている生りんごを使った「アップルティー」、今年も始めました。

有機栽培のりんごとオーガニックウバ紅茶のヘルシーハーモニーをお楽しみください。

紅茶専門店Anna Maria 店主のお茶の履歴書 -日々、お茶と共に-                      第3回 UVA そして DIMBULA

                         目 次

 

   第1回     中国料理を通して ―中国茶との出会い―

   第2回 主婦の憩いの時間に ―お茶はいつも正しく淹れて―

  第3回    UVA そして DIMBULA

第4回   インド料理を通して ―スパイス入門―

第5回   園芸と農業(1) ―一人だけのティータイム―

第6回   園芸と農業(2) ―岐路 もしかしたらガーディナー

第7回 シンガポール時代(1)  ―料理のこと―

第8回   シンガポール時代(2  ―紅茶のこと―

第9回   シンガポール時代(3) ―中国茶のこと―

第10回   ウバの正体を知る

第11回   静岡の緑茶と静岡の紅茶について

第12回  米国フィラデルフィア美術館 ―茶室「寸暇楽庵」見学― 

第13回  本物のインド紅茶との出会い ―ダージリンの奥深さを知る―

第14回  本物のスリランカ紅茶との出会い ― とうとうゲット 最高のウバ

第15回 ロンドン研修 The Lanesboroughでの7日間

第16回  登録商標「紅茶専門店Anna Maria ―名前の由来―

第17回     終わりに 垣間見た歴史 ―紅茶を通して―

 

 

第3回   UVA そして DIMBULA

 

そのような日々の中で、ある時、UVA, DIMBULA と印刷してある2パックの紅茶を頂きました。 その味は「清明且つ明快」であり、今まで飲んできた紅茶とは一線を画していました。

 

紅茶はすなわちセイロン紅茶と認知されていた時代でしたので、ウバという紅茶が何なのか知りたくても、インターネットもなかった当時、不可能でした。 私が紅茶の研究をしていたのなら、事情は違っていたと思いますが、デパートへ行ったときなどに思いついて紅茶売り場をのぞいただけでは、見つけることはできませんでした。 20代の後半に抱いたこの疑問が解けたのはそれから約20年も経ってからでした。

 

 

次回は、インド大使館の奥様から教えていただいたインド料理およびスパイスの話になります。 10月19日(日)に掲載の予定です。

 

2008年10月 5日

紅茶専門店Anna Maria 店主のお茶の履歴書 -日々、お茶と共に-                       第2回 主婦の憩いの時間に ―お茶はいつも正しく淹れて―

                        目 次

    第1回     中国料理を通して ―中国茶との出会い―

   第2回 主婦の憩いの時間に ―お茶はいつも正しく淹れて―

第3回     UVA そして DIMBULA

第4回 インド料理を通して ―スパイス入門―

第5回  園芸と農業(1) ―一人だけのティータイム―

第6回     園芸と農業(2) ―岐路 もしかしたらガーディナー

第7回 シンガポール時代(1)  ―料理のこと―

第8回    シンガポール時代(3) ―紅茶のこと―

第9回  シンガポール時代(2) ―中国茶のこと―

第10回    ウバの正体を知る

第11回    静岡の緑茶と静岡の紅茶について

第12回 米国フィラデルフィア美術館 ―茶室「寸暇楽庵」見学― 

第13回 本物のインド紅茶との出会い ―ダージリンの奥深さを知る―

第14回 本物のスリランカ紅茶との出会い ― とうとうゲット 最高のウバ

第15回 ロンドン研修 The Lanesboroughでの7日間

第16回 登録商標「紅茶専門店Anna Maria ―名前の由来―

第17回    終わりに 垣間見た歴史 ―紅茶を通して―

 

第2回 主婦の憩いの時間に ―お茶はいつも正しく淹れて―

 

 

結婚して、専業主婦の生活に入ったのですが、家事や育児の合間には、甘い物とお茶が欲しく、ティータイムは唯一のストレス発散の時でした。 結婚するまで料理などしたことがなかったのですが、節約のためとおいしい物が食べたい一心で、料理やお菓子作りに励みました。このころはコーヒーをのむことが多かったのですが、なれない家事や育児でいつも疲れているにもかかわらず、コーヒーやお茶の類はお茶の缶などに入っている説明書を見ながら、どのお茶もいつも正しく淹れておいしく飲むことにこだわりました。

 

当時、よく紅茶の詰め合わせを頂くことがありました。 「世界三大銘茶セット」とか有名デパートや外国のブランドの紅茶を度々いただきましたが、どれも缶に書いてある説明とは飲んだ印象が違っていました。 紅茶は「エキゾチックでおいしい飲み物」 と子供心に思っていたので、その記憶を確かめるために、自分でもスーパーやデパートで色々な紅茶を買ってみたりしましたが、どれも説明書に書いてあるような印象をもつことはありませんでした。 ついこの間までそうであったように、当時はティーバッグ全盛時代で、おいしい紅茶にめぐりあうのは不可能に近かったのでした。

 

次回は10月12日(日)に掲載の予定です。

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