英語の勉強を通して
私は結婚して以来専業主婦をしていたのですが、20年ほど前、必要に迫られ独学で英語を勉強することになりました。 教材はたまたま机の上にあったダイナースクラブの会員誌の広告で見た「Executive English-経営者のための英語-」というカセットテープと教則本のセットに決めました。 ビジネス教則本でしたが、内容は一般的なものであり、聞いたり読んだりしていれば英語の力がつくだろうと思ったのです。
内容はアメリカのビジネス界で成功した人たちのサクセスストーリーでした。今日のITのさきがけと言ってもいいNCR、IBM、あるいは鉄道、航空、石油、鉄鋼、銀行、証券、ファッション、サービス等さまざまな分野で活躍した人たちの大変興味深い、印象的な話で成り立っていました。しかしながら、それら英文教材のテープを聞き取ることは並大抵ではなく、時間を惜しみ、台所の洗い物をしながら何回もテープを巻き戻し、それから又聞きなおしては英語の教則本で確認するという作業の連続でした。ですから、しまいにはテープがよじれたり、水にぬれてしまったりと大変な思いをしました。 当時はCDがまだ開発されていなかったので、カセットテープはヒアリングの勉強に大いに役に立ちました。
さて、そのようにして2年から3年くらい英語の勉強を続けたと思いますが、ある時、ふと経営ということに思いが至ったのでした。 自分自身を分類すると芸術方面にあたると思っていましたので、経営に対して思いが至ったということは、私にとっての転換点あるいは未知の分野へ視野が開けた瞬間だったと申せます。
勉強しながら気が付いたことは、全ての経営者に共通するのは不断の努力、粘り強さ、勤勉さでした。 ですが、面白いことに、あることが成功したのは必ずしも綿密な計算に基づく結果ではなかった、とか、成功は本能的な勘やひらめきによるものだったとも述懐していました。 私はこのような成功者の体験談を知るうちに英語の勉強をしながら、図らずもビジネスの勉強をしていたのでした。 それもそのはず、私が選んだ英語の教材は「経営者のための英語」だったのですから。
経営者として
アメリカで成功した経営者と言うと、合理的なしたたかさでM&Aを繰り返すようなイメージがありますが、もちろんそういう面もあるにせよ、私が印象深く思ったことは、その中には信仰心の篤い人たちもいれば、福祉活動に熱心に取り組む人たち ―篤志家と呼ばれる人たち― も少なくなかったということでした。又、現役時代の言動を恥とし、裁判沙汰になるようなことはするべきではなかったと後悔している経営者もいました。 法を犯したり他者を傷つけるような経営者の行く末は、今日でもメディアによって日常報じられている通りです。 経営も芸術と同様その人の心の内が反映されると申せましょう。
その国の福祉政策が貧困であったために篤志家が輩出したとか、当時は宗教的教えに忠実な人が少なくなかったとか、色々な理由があると思いますが、アメリカでのサクセスストーリーを思い浮かべる時、一般的には一晩でグローバルマネーにより大もうけしたような話が聞こえがちですが、世界に名を馳せずともこのようなCharitable Person ―篤志家― によるビジネスを展開している人たちはアメリカのみならず、世界中に、そしてまた私たちの周りにも、いると思います。 真にマネーをグローバルに展開できる資格のある人々はこのような方達であると信じています。
利益はあとから追いかけてくる
私が始めた紅茶専門店はサービス業に当たります。 このサービス業で成功した人達のなかで誰が言っていたか、或いは其の考えは共通した考えだったか今はもうはっきりと思い出せませんが、「サービスはお客様のためにある」といっているのです。つまり、お客様は何を必要としているかを常に考えていなければならない、どのようなサービスがお客様の満足度を最大限に引き出せるかということを常に最優先させているのでした。
このような経営者たちがそれでは、実際にどのような行動により、其の理念を実現したのでしょうか。 それは「言動一致」の一言で表すことができると思います。 客が望んでいると想像すればすぐにそれを実験してみたでしょうし、実にこまめに誠実に働いたのだと思います。 その思いが客に届き、顧客が増え、ビジネスは大きく膨らんでいったのでしょう。 はじめは損をしているように見えても、利益は後から追いかけてくる。― これは私がサービス業に対して得た教訓でした。
私が50歳を過ぎてから起業したとき、これらの経営者の理念は私のビジネス上のバイブルといっても過言ではなく、それはいつでも私の心の中にありましたし、現在でも其の通りです。 常にお客様を優先することは、しかしながら、客に媚びたりおもねたりすることとは違います。 常に正しいあり方で、可能な限り、客の要望に近づこうとする態度だと思います。
近江商人とアメリカンビジネス
私は東京生まれの東京育ちで、関西の事情については大変疎く、夫の実家のあるここ京都嵐山に住むまで、近江商人についてはっきりとは認識していませんでしたが、ある日、新聞で近江商人についての記事を読みました。わたくしが驚いたのは近江商人の商道徳というものが、あの私が勉強していたアメリカのビジネスマンの経営思想、経営哲学と共通していることを発見した時でした。近江商人は売り手、買い手、そして社会、の「三方良し」という商道徳に基づいて商いをしていたということでした。
それは、サービスはお客のためにあると言い、又チャリティーや福祉活動にも熱心だったアメリカのあの当時のビジネスマンと同じ考え方でした。
媚びない、真似ない、ごまかさない
私は紅茶専門Anna Mariaの店主として、この「三方良し」を実現すべく、媚びない、真似ない、ごまかさない、の三つを肝に銘じて日々の業務に専念して行きたいと思っております。
以上、紅茶専門店Anna Maria の経営理念を申し述べさせていただきました。
次回予告
次回は私とお茶(紅茶、日本茶、中国茶等)についての話を料理などのエピソードも交えながら述べさせていただきます。
紅茶専門店のお茶の話というと、お茶の淹れ方、歴史などの話が一般的ですが、紅茶専門店アンナマリアでは、経営理念で述べましたように、安易に真似ないということをモットーとしております。 したがいまして、すでに皆様が何度もお聞きになっていたり、お眼にされているような一般的な紅茶専門店のお茶の説明などではく、主婦暦30年以上の日々の中で私や家族が体験してきたお茶(紅茶、日本茶、中国茶、コーヒー)の話を述べさせていただきたいと思います。
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